経絡治療とは

皆さんが鍼(はり)という言葉から感じられるイメージはどのようなものでしょうか?

細い鍼を筒に入れて鍼の頭をトントン叩いて皮膚に刺すイメージ・・・

やったことはないけどハリを刺すんだから痛そう・・・

いろいろあると思います。

 

一口に鍼灸といっても、日本には沢山の流派が存在します。

鍼灸は飛鳥時代に仏教の伝来とともに最先端の医療技術として我が国に伝えられたといわれています。

以来、千数百年の間、日本人の体質と感性に合った形で進化発展を続けてきました。

 

話が少し逸れますが、以前、中国人の留学生の女性が交通事故の後遺症の首の痛みで来院されました。

問診、検査を進め現在の病症に最も効果的なのは「鍼灸」であると判断して、鍼灸治療をしてゆきましょうと申し上げたところ、とても取り乱されて、「鍼は絶対イヤ!!」と仰りました。

よくよく話を聞いてみると、留学前に地元で鍼灸治療を受けた経験があるが、その時とても太い鍼を使い施術されてすごく痛い思いをしたので、もう受けたくないとのことでした。

実際に使う「刺さない鍼」をお見せして物理的に身体に刺入出来ない構造を説明させていただき、なんとか治療をさせて頂く事ができましたが、刺さないのに首の痛みが和らぎ、とても戸惑っておられるご様子でした。

なんでも、地元の方達は鍼はとても痛いけど効果があるので、みんな我慢して施術を受けているとのことでした。

 

このように、同じ鍼でも現在中国で行われている物と日本で行われている物は、形は似ていてもそのやり方は大きく違っています。

さらに、日本国内では時代の移り変わりの中で鍼の上手い名人が現れるとその元に、そのやり方を信奉する人が集まり一流一派が形成され伝承されてきたという経緯があります。(中国や韓国では、国家が主導して統一見解を作り、その中で治験が集められ臨床が行われています。)

 

以上のような流れの中で、日本では繊細な日本人の体質と感性に合わせて髪の毛ほどの太さの鍼が生まれ、極めて微弱な刺激で最大の効果が期待出来る方法論が編み出され、江戸時代までは最先端の医療として、救急疾患から慢性疾患まであらゆるジャンルの疾病を適応としていきました。

江戸時代の文献を紐解くと、肩こり腰痛、頭痛から、下痢などの消化器疾患や性病、精神疾患、はては溺死者の蘇生法まで網羅されています。

 

時代が下り、明治維新の際、富国強兵の国策により近代西洋医学が導入され、古来受け継がれてきた鍼灸をはじめとする「漢方医学」は表舞台から退かざるをえなくなりました。このときの漢方医学に対する風当りはとても強く、一時は廃絶の危機にまで追い込まれることになりましたが、当時の鍼灸師が尽力しなんとか存続出来るようになりました。

 

その後、第二次世界大戦が勃発し、日本が敗戦を迎え連合軍による占領政策が始まると、「漢方医学」は未開で野蛮な方法であるとされ、二度目の廃絶の危機を迎えます。

この時、鍼灸に理解がある医師と鍼灸師が一緒になって存続を訴え、何とか存続を勝ち取ることが出来ました。

 

しかしながら、二度の廃絶の危機により古来より伝承されてきた方法論はすっかり表舞台から姿を消し、当時は地方の寒村や漁村などで細々とその命脈を繋ぐような状態でした。

 

この様な中、青森出身の柳谷素霊(本名は清助、素霊は古典東洋医学のバイブルである「素問」「霊枢」からとった号)が中心となり「古典に還れ」をスローガンに集まった弟子と共に古来より伝承されてきた鍼灸術を発掘、研究してゆきました。

 

ある時は千葉の漁村に名人ありと聞けば直接訪れ教えを乞い、全国の埋もれた名人の元に行き技術の伝授を受け、漢文で書かれた古典医術の書籍を解読して臨床に落とし込み実際に有用か否かを判別して一つの体系を形作ってゆきました。

 

柳谷素霊の門下であった、井上恵理(いのうえけいり)、岡部素道(おかべそどう)らが中心となって体系付けた、この鍼灸術は「経絡治療(けいらくちりょう)」と名付けられました。

その後、新聞記者出身の竹山晋一郎(たけやましんいちろう・号は晋民)が合流しその方法論が全国に広められました。

 

この流れの中、日露戦争で受傷し失明した福島弘道が盲学校に入り鍼灸師となったのですが、当時の方法論では満足な結果を残すことが出来ず悩みながら鍼一本で身を立てる方法を模索していました。苦労して色々な方法を学び情報を集める中、この「経絡治療」の話を耳にし、是非学びたいと申し出たのですが、当時の研究は古典の原書を解読する作業がメインだったため盲人の身では一緒に勉強出来ないと断られてしまいます。

 

諦めきれない福島弘道は再三に渡りこの鍼灸術を学びたいと談判したところ、井上恵理より一緒に勉強するのは無理だが、自分たちで盲人のための会を作れば全面的にバックアップするとの約束を得て、ここに「東洋はり医学会」が誕生しました。

「東洋はり医学会」は当初、盲人専門の会だったのですが、時代が下るにつれ晴眼者にも広く門戸が開かれ現在に至っています。

 

当院で行われている「経絡治療」はこの「東洋はり医学会」で行われている鍼灸術です。

 

この鍼灸術の特徴として、

①望診(視覚から情報を得る方法)、聞診(声や喋り方、匂いで情報を得る方法)、問診(病歴や現症だけでなく東洋医学的な項目を聞き取り情報を得る方法)、切診(=脈診、腹診、触診。脈やお腹の皮膚の張り具合や手足や患部などの皮膚の状況などから情報を得る方法)という東洋医学独特の診察法を用いて、治療方針を決める。

 

②鍼は主に接触する程度の刺激でまず、手足のツボに鍼を施し遠隔部から症状を和らげてゆく。(患部にも直接鍼灸を行います。病勢が強い場合は同意を頂いた上で鍼を刺入することがあります。)

 

③身体からアプローチすることにより心身両面に効果を発揮し、幅広い疾患に適応出来る。

 

④本来皆さんが持っている生命力を強化して病気になりにくい身体づくりが出来る。

 

などが挙げられます。

鍼は怖い、痛そう、という方には刺せない構造になっている特殊な鍼も御座います。(中国の古墳から同じ形の物が発掘されている、刺さない鍼が数種類あります)

 

この古くて新しい鍼灸を是非、みなさんの御身体で体感してみてください。

皆さまのご来院を、心よりお待ちしています。

ヤスイ鍼灸接骨院

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